お墓は正の財産、負の財産?
私たちには、必ずこの世の生涯を終える時がやって来ます。
昨日までお話をしていた、頼りの配偶者が今日は冷たくなり、寝息さえも立てない。
「愛別離苦」という言葉は仏教の言葉でありますが、この苦しみ、悲しみは四文字で表すにはいささかこと足らぬ想いでありましょう。
しかし、定業の時は男女、尊卑、貧富の隔てなく訪れるのです。
私達は亡くなられたその亡骸を荼毘に付します。そしてその亡骸が最後に残したものが、「遺骨」なのです。
少子高齢化の中、遺骨を火葬証明書を抜いた状態で電車の網棚の上に、さも忘れたように放置するような人のある昨今、お墓もまた正の財産から負の財産に変わる傾向にある気がします。
祭祀継承権。墓、仏壇、祭具などを引き継ぐ権限ですが、これが権限から義務に変遷を遂げております。
お墓がある事で、自分たちのご先祖様が残された、最後のしるしとしてのご遺骨を大切にお守りする事ができ、またそこに自分たちも家の一員として収まる事ができる。これが墓の持つ意味かと思います。
しかし昨今の風潮は、祭祀継承権を引き継ぐと、墓守りをしなければならない、年忌の勤めをしなければならない、寺との付き合いを強いられる、などという感覚が前面に出て来ているようで、そこから墓じまいや、仏壇じまいという考え方が生まれたのだと思います。
墓は負の財産なのでしょうか?
一般的に人は適齢期に相手を見つけて結婚し、ほぼ多くの方は子を授かります。
そして、ほぼ多くの親は子供を愛し、子供を守りながら育てておられます。
父親は父親として子とかかわり、母親は母親としてかかわりを持ちます。
特に母親の愛は「無償の愛」と言われます。
しかしそのことを知らない、或いは気づかないまま大人になった子は、墓を正の財産とみなすことができなくなるのだと思います。
親があって、子がある。
この逆は存在しません。
様々な環境のご家庭があろうと思いますが、少なくとも墓を負の財産として捉えるような子育てだけは避けねばならないと思います。
それにはどうするか、簡単です。私たちが、仮に親が他界していたとしても、その親を敬い、尊敬し、これ以上ない自分の恩人であることを、子に、その姿、態度を持って見せればいいのです。
墓は負の財産ではありません。
家族や子孫を守る正の財産です。
その考えを土台として、その上でどうするかを考えていただきたいと思います。
これからの20年、「多死社会」となります。
どうぞご自身の足元をしっかりと見て、後悔のない人生を送っていただきますように。
ご覧下さり、ありがとうございました。合掌